『原田マハの印象派物語』~『楽園のカンヴァス』を読む
- 西村 正
- 2020年3月20日
- 読了時間: 2分
日本は印象派絵画を好む人が多いようだ。私の叔父・西村俊郎も多分に印象派を意識していたと思う。しかし叔父は、特に渡欧して現地の美術館で実際の作品を観るようになってからは、むしろ印象派以前のターナー、コンスタブル、コロー、ミレーなど、いわゆる写実主義の画家たちを自分の指針とするようになったようである。そのことは叔父が書いたエッセイでも確認することができる。

私は自分が画家ではないから叔父のような「指針」を持つなどということは考えたこともないが、自分の好みは、やはり「印象派とその前後」にあると感じている。そんな私が最近書店で見つけて手に取り、そのまま買ってしまったのは『原田マハの印象派物語』である。これは、以前のブログで紹介したことがある林洋子監修『旅する画家 藤田嗣治』と同じシリーズの本だということもあるが、モネ、マネ、ドガ、ルノワール、カイユボット、セザンヌ、ゴッホの略年譜が一覧できるということが購入の一番の動機になった。だが、それだけではなく、それぞれの画家の代表作とそこに付された「物語」に思わず引き付けられたからでもある。原田マハは”美術ミステリー”というジャンルの人気作家だということだが、私はこれまでそのジャンルの作品に親しんだことがなかった。しかし自分がこの本に続いて同氏の『楽園のカンヴァス』をインターネットで注文して、到着した当日にすぐに読了してしまったことを考えると、自分はこういうものを求めていたんだなぁと思わざるを得ないのである。もちろん娯楽としてだが、アートのこういう楽しみ方があってもいいんじゃないかと思った次第である。『楽園のカンヴァス』は彼女が学芸員としてニューヨーク近代美術館に派遣されて勤務した経験も活かして構想した、アンリ・ルソーの大作の真贋判定を巡るミステリー小説である。 (2020.3.20)
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