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バーナード・リーチを巡って

  • 執筆者の写真: 西村 正
    西村 正
  • 2020年4月16日
  • 読了時間: 2分

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 前回取り上げた『楽園のカンヴァス』に続いて、私はつい先日まで、また原田マハ作品を読んでいた。今度は『リーチ先生』。これも「史実に基づいたフィクション」であるが、実在した人物と架空の人物の「交流」が巧みに描かれていてテレビドラマを観るようなノリで楽しむことができ、なおかつ「民藝」というものについて大変勉強になった。登場人物はバーナード・リーチの他、高村光雲と光太郎、柳宗悦(ヤナギ・ムネヨシ)、富本憲吉、濱田庄司、河井寛次郎といった錚々たる顔ぶれである。テーマは「陶芸」、それも柳宗悦が提唱した「用の美」(無名の職人の手になる日常雑器が持つ美)の追求である。

 実は私は20代の頃から柳宗悦に傾倒してきた。それは『民藝四十年』(岩波文庫)という本の巻頭を飾る「朝鮮の友に贈る書」という手紙文の形式を採った作品に強い感銘を受けたからであった。1920(大正9)年に発表された文章である。朝鮮が日本に併合されて10年。同化政策によって朝鮮の文化が軽視される風潮の中で、柳は堂々と朝鮮独自の美、それも民衆の日常生活に根差した調度品に彼が見出した美の価値について論陣を張ったのだ。私の朝鮮語学習や韓国旅行については以前にこのブログに書いたことがあるが、柳の著書は当時の私の心の拠り所であったと言ってよい。

 イギリス人陶芸家のバーナード・リーチは香港に生まれ、幼い頃日本に住んだこともあったが、その後イギリスで教育を受け、1909(明治42)年に22歳で再び来日して陶芸に出会い、日本の陶芸作品が持つ中国とも欧州とも違う美に感銘を受ける。そして柳や日本人陶芸家たちとの交流を続けながら、後にイングランド南西部のセント・アイヴスに自らの工房と窯(The Leach Pottery)を開く。

 ところで、リーチが再来日した1909年は西村俊郎が生まれた年であり、リーチもまた90歳を超える年齢まで生きたのであった。私の叔父・西村俊郎は洋画、それも写実絵画一筋で、陶芸に興味を持つことはほとんどなかったが、私は陶芸、特に陶器に興味を惹かれて益子などに行くこともあったし、アサヒビール大山崎山荘美術館などに出かけたこともある。セント・アイヴスにもできればいつか行ってみたいと思っている。(2020.4.16

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