一枚の絵を眺める
- 西村 正

- 2018年10月20日
- 読了時間: 2分
更新日:2019年5月25日
家の特定の場所に絵を掛けて眺めることには、展覧会に出かけて行って絵を見るのとはまた違った意味があるように思えます。家に掛けるとなると、やはり8号くらいまでのものが選ばれますね。

西村俊郎「蜜柑とコップ」(F4号)
この絵は叔父が描いた数少ない静物画の一つですが、保存状態が悪く、キャンバスがボロボロな上、絵具の剥げ落ちもあります。しかし、私にとっては世田谷の家を思い出させてくれるという意味において手放し難い絵なのです。特に、蜜柑が載った皿の絵柄が幼少期の記憶に結びついています。

西村俊郎「大沼公園」(F8号)
この絵は長い間、どこを描いたものか判りませんでした。しかし、昨年の夏、初めて北海道新幹線で北海道に渡り、函館から小樽までドライブしたときに見た山の形がヒントになって、場所を特定することができました。それ以来、この絵に愛着が増し、眺めるたびに心が安らぐ絵となっています。

西村俊郎「田子漁港」(F6号)
西伊豆は鉄道が通っていない分、東伊豆に比べて鄙びた風情が多く残っていると言えるでしょう。以前は沼津港から出る船が戸田から松崎までの各地を結んでいましたが、今はバス便か自家用車に頼るしかありません。叔父は田子周辺をよく訪れていましたが、多分修善寺からバスで行ったのでしょう。その頃よりは大分あとになりますが、私は子供を連れて家族で田子をはじめとする西伊豆各地をよく訪れました。この絵を見るたびに、子供たちがまだ小さかったころの記憶が呼び覚まされます。
叔父の絵は強烈な個性こそ感じられないものの、安らぎを与えてくれて、なおかつ飽きがこないということは確かなのではないかと思うのです。 (2018.10.20)
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