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北海道に方言はあるのか?

  • 執筆者の写真: 西村 正
    西村 正
  • 2020年4月24日
  • 読了時間: 3分

更新日:2020年4月26日


 新型コロナウィルスの終息が見通せない中で、美術関係でもあらゆる展覧会が延期や中止を余儀なくされています。感染の恐怖とともに経済的な不安も募りますが、皆様どうぞご自愛ください。

 三年前に百歳で亡くなった母は何かにつけて「いゃ~、こんなことは初めてだねぇ」と口癖のように言っていました。今回のコロナ禍を見たらきっと、またそう言ったに違いありません。実際ここ数年、頻繁に起こる異常気象などで母の言葉を思い出すことが多くなりました。

 さて、今回は世田谷にいた頃の家族の思い出です。子供の頃、私は「北海道には方言がないんでしょ?」と近所の子供に言われたことがあって何となくそう思っていました。(私が北海道に初めて行ったのは二十歳のときでした。)しかし、ある時、近所の子供の家で遊んでいるとき一匹の猫が近寄ってきたので「あっ、ネが来た!」と【ネよりもコを高く発音して】叫んだ時、そこのお母さんが咄嗟に「タダシちゃん、ネじゃありませんよ。【ネをコよりも高く発音して】コですよ」とわざわざ発音矯正をしてくれたのです。その経験によって私は、我が家では「猫」という単語に関してアクセントが東京言葉と違うんだなということを知りました。

 最近読んだ、加藤重広著『言語学講義---その起源と未来』(ちくま新書、2019年、pp.21—25)によると、日本において方言研究が本格化した明治中期には北海道に固有の方言があると見られていなかったので調査対象にならなかったが、その後、移住者の世代交代を経て方言混合と標準語化によって「北海道方言」が成立していると認められることが述べられています。私の経験では、北海道方言の特徴は何よりもそのアクセントにあると感じられます。何気ない会話を耳にした時、アクセントによって、ああこの人は北海道の人だなと大体判ります。同書によれば、北海道の言葉は東北方言や北陸方言を中心にその他の地方の方言も含めた混合方言に学校教育などを通じた「標準語化」の圧力がかかって、わずか150年ほどの間に形成されたといいます。同様の事例として米国におけるアメリカ英語の成立に触れているのも興味深いところです。

 いま思えば、我が家では祖母(俊郎と羊三の母)が一番方言がきつかったようです。彼女は江差生まれだったので、北海道方言というよりは東北方言に近い言葉を話していたのでしょう。祖母の妹が遊びに来た時などは二人の会話が私には理解しづらかったのを覚えています。それに比べると私の両親も叔父や叔母も、あまり北海道くさい言葉ではなかったように思うのですが、やはりアクセントだけは保持されるようで、特に「猫」や「椅子」【ネコの場合とは逆で、北海道ではス、東京ではイ】などに顕著に特徴が現れていました。ただ、面白いことに、私は北海道に行って従兄弟たちと話す時に東京アクセントで話すと「気取っている」というか浮いてしまうように感じられて、自分がわざと北海道アクセントに寄せて話そうとしていることに気づくことがあります。

 啄木の「ふるさとの訛なつかし 停車場の人ごみの中に そを聽きにゆく」、そして井沢八郎『あゝ上野駅』の「・・・配達帰りの自転車をとめて聞いてる国なまり」------ ここでいう「訛り」とはアクセントのことなんだな、と今はもう東京の「北の玄関口」ではなくなってしまった上野駅の低いホームを思い出しながら、しみじみ想ったのであります。

2020.4.24

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