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永代橋とその周辺(西村俊郎の昔の画風を想う)

執筆者の写真: 西村 正
西村 正
2020年7月1日
読了時間: 2分

 コロナ禍の中、緊急事態宣言が一応解除されてからも私は外出に対してかなり慎重になっていたが、先日、何かに突き動かされるように久しぶりに都内に足を運んだ。向かった先は隅田川の河口、中央区と江東区にまたがる地域である。東京で生まれ育ったと言っても、渋谷、新宿、それに銀座や上野界隈などの繁華街に行くことは多いが、日本橋から深川にかけての地域はこれまであまり馴染みがなかったから、控えめな散策ではあっても思いのほか新鮮な発見が多かった。


 日本橋人形町から水天宮を経て隅田川大橋を渡り、江東区側の河岸を永代橋方向に歩く。永代橋の名前は、このブログを始めた頃に一度「叔父の思い出(5)」として書いたことがある。叔父は昔この界隈の風景を描きに世田谷からよく通っていたようなのだ。今では地下鉄が縦横に走る便利な土地だが、当時はおそらく省線(のちに国電と呼ばれるようになったが当時はまだ省線と呼ぶ人が少なくなかった)と都電を乗り継いで来たのだろう。私の記憶では、その当時の叔父の風景画は一言で言えば茶褐色のイメージであった。叔父がまだ自分を人物画家と位置付けていた頃のことである。その後、叔父はリュックとイーゼルを背負って日本各地への写生旅行を始めるのだが、このウェブギャラリーで紹介している作品のほとんどはその写生旅行以後の作品であって、色彩も青や緑を基調とする明るいものに変わっている。それ以前の風景画の色調は、どちらかと言えば暗くて重苦しいものだった(と私は感じていた)ので、以前のブログでは「売れたとも思えない」とか、本人が「キャンバスの絵具を削って、その上に別の絵を描いたのではないか」などと書いたのであった。それは作品が手元に全く残されていない理由を、本人自らが過去の風景画を否定したと考えたからだが、最近になって、あながちそうとも言えないのではないかと思えてきたのである。そう思うと私は無性に叔父のその当時の風景画をまた観てみたいと思うようになった。

 永代橋から東に少し行くと門前仲町である。富岡八幡宮などもある、ちょっとした繁華街である。それから地下鉄で一駅、月島まで足を延ばした。街の活気が少しずつ戻りつつあるのを感じるが、以前のようになるには、まだまだ時間がかかりそうだ。ステイホームも必要だろうが家に閉じこもってばかりでは人間は元気でいられない。恐る恐るではあったが、忘れていた文化的、身体的、社会的刺激の大切さをしみじみと感じさせてくれた一日であった。(2020.7.1)


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