「コートールド美術館展 魅惑の印象派」を観て
- 西村 正
- 2019年9月12日
- 読了時間: 2分
更新日:2021年1月22日

会期の初日に展覧会を観に行くのは、私にとって珍しいことである。東京都美術館に行くのは去年の「藤田嗣治展」以来だ。平日だったからか、チケット売り場に列ができることはなかったが、それでも人の入りが少ないというほどではない。いつもの事だが、私は作品そのものよりも、その説明文のほうに目が行ってしまう傾向があり、それらを読むだけで疲れてしまうことが多い。それも、この画家は何歳まで生きたのかとか、この作品は何歳のときの作なのかとかに関心が向いてしまうのである。
今回の出品作では、やはりポスターにもなったマネの「フォリー=ベルジェールのバー」に一番関心が向いた。1882(明治15)年の作品である。印象派は19世紀後半のフランスから起こったとされるが、その時代は日本で言えば幕末から明治初年にかけての頃だ。本展では「印象派の革新性」ということがテーマの一つになっているが、周知のように、当時「印象派」とは蔑称であって、その評価は決して高くなかったという。しかし、サミュエル・コートールドは自分の眼を信じて、気に入った印象派作品を次々と購入して一大コレクションを築いたのだ。そして、そのコレクションを一般に公開したのである。
考えてみれば当然のことだが、プロの芸術作品は、その創作を支えてくれるパトロンなしには成り立たない。「パトロン」は「ファン」に置き換えてもいいだろう。新しい価値を生み出す人がいて、それを認める人がいてこそ、芸術は新しい時代を開くことができるのだ。私は、この会場を巡るだけでも多くのことに気づき、インスピレーションを与えられたような気がしている。
マネのこの絵に関しての私の「発見」は、画面の右下と左下に「バス・ペールエール」の瓶が並んでいたことである。私はこの英国ビールをかれこれ30年近く愛飲してきたのだが、最近になって輸入が途絶えてしまい、どこを探してもこのビールを見つけることはできなくなっていたのである。なんと140年近く前の絵の中に、今と全く同じラベルの瓶を見つけた驚きと喜びをここに書きとめたいと思った次第である。本展の会期は、9月10日から12月15日まで。 (2019.9.12)
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