「生誕100年 中村正義 -その熱と渦-」@平塚市美術館
- 西村 正
- 4 日前
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中村正義(1924—1977)については、私は当ブログですでに二回記事を書いたことがある。52歳で亡くなった画家の生誕百年は正確には2024年だが、今年2025年は、豊橋市美術博物館(2/22~3/30)、平塚市美術館(4/12~5/18)、奈良県立美術館(5/31~7/6)の3館で回顧展が開かれる。川崎市麻生区細山の「中村正義の美術館」においても「中村正義 風景・人物 そして顔」展(3/21~5/18)が開かれた。私は、今回は平塚市美術館を会期中に二回訪れた。この記事では特に私の記憶に残った作品を何点か紹介したい。
※作品および資料の写真は、すべて同展の図録を接写。会場風景の写真は筆者が撮影。








日本画とは花鳥風月などばかり描く古臭い趣味の絵だと勝手に思い込んでいた私は、随分前の話だが、国立新美術館でいわゆる現代の日本画を初めて見た時、その思い込みを覆されて感動を感じたものだった。その時、日本画と洋画の違いは画題にあるのではなく絵の具等の画材にあるのだということを知って、私の日本画に対する見方は随分変わったと思っていた。しかし、後に川端龍子や中村正義の作品に出会った時は、日本画の変革に挑んだ画家が早い時期からいたことを知ってさらに驚いたのである。
私が中村正義の名前を知ったのは1990年代になってから「顔の連作」という見出しで「中村正義の美術館」(1988年に開館)が新聞で紹介されていたのを見たことによる。しかし実際にそこを訪れたのは2021年であったが残念ながら閉館中で中に入れなかった。実際に入館できたのは2023年5月のことである。作品としての出会いは「顔」であったが、実は「顔」は数ある中村正義作品のテーマの一つに過ぎない。彼のテーマは、風景、女、舞子、花、仏画、自画像、顔、等、多岐に渡るが、中には小林正樹監督の映画『怪談』第三話「耳なし芳一」の挿入画として描かれた「源平海戦絵巻」などもある。
中村正義には、異端や反逆というイメージが付きまとうが、異端と言われるからには正統を究めていなければならないだろうし、権威に屈することなく反逆するには揺るぎない自信が必要なのだから、彼が真に実力ある天才だったことは明らかだろう。また旺盛な好奇心を持ちながらも決して独り善がりにならず、しかも病魔とも戦い続けたのである。しかし私が一番凄いと感じるのは、彼は一つの頂点を究めると次にはもうそれを破壊し始めるというところだ。一か所に留まってそこに安住しようとしない。画風はどんどん変ってゆく。飽くなき挑戦を求めずにはいられない人だったのだろう。52年の生涯であったが、その作品は今も輝きを失うことなく生き続けていた。「生誕100年 中村正義 -その熱と渦-」、本当に良い展覧会だった。 (2025.5.25)
●お薦めします→ DVD 『父をめぐる旅--異才の日本画家・中村正義の生涯--』
※「中村正義の美術館」ホームページをご覧ください。
※当ブログの中村正義関連記事の日付は ①2021.12.1、②2023.5.6、記事のカテゴリーは「アート・カフェ」です。
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