最晩年の作品
- 西村 正
- 2020年1月19日
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↑ 西村俊郎「ハンブルク港」(F20号) ↓「ハンブルク港」(F8号)


ハンブルク港の写真
※ハンブルク港の写真はインターネットから使わせていただきました。
今年2020年は、西村俊郎没後20年に当たる。1990(平成2)年1月にフランスから帰国してから2000(平成12)年3月に亡くなるまでの10年間、叔父は毎日3回の散歩と作品の手直しを日課としていた。その手直し作業を一番繰り返していた作品が、「代表作20選」に取り上げた「ハンブルク港」(F20号)である。同じ場所を描いたF8号の作品と比べてみると、叔父の絵らしくないものに変わっているのが判る。手直しというよりは別の作品と言ったほうがいいかもしれない。これは実際、画家・西村俊郎最晩年の作品なのである。当時叔父の画商だったN氏がこの絵を見ながら、「歳を取ると段々こういう絵になっていくのかなぁ」と独り言のように呟いていたのを思い出す。
どんな画家でも最初はみな具象画から出発するのだと思うが、次第に抽象画などに変わっていく画家は少なくない。しかし叔父のように生涯具象画にこだわり続けた画家でも、最晩年はこういう境地に入っていくのかと思うと、私はこの絵に愛着を禁じ得ないのである。(2020.1.19)
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